氷屋のノリから、「makoっちゃん今どこ?なにやってんだよっ早く来て!一番ホームっっっ!!!」 と、朝から慌しい電話をもらう。普段は魚を買う度に 「ノリちゃん早く氷チョウダイ、3番ホーム。」 と呼びつけているんだけど、今日は朝から真逆の展開である。
「へーへーすぐ行きまっさ。ところで何をそんなに急いでんの?」と聞き返すと、
「今、ボーズコンニャクが来てんの。」という。
へ?
「ぼうずコンニャクさんが来たの?」
「makoっちゃん何言ってるんだよっ。魚だよ、真っ黒くてさ、おっきい魚のこと。」と氷屋のノリ。
ぼうずコンニャクさんは、去年の今頃、気仙沼に来た方である。
※市場魚貝類図鑑 ぼうずコンニャク
一方、ボウズコンニャクという魚は、何度も図鑑で眺めた事があるが、少なくともオラの持ってる図鑑では、真っ黒くもなかったし、大きさも25cm程度の小魚だったと記憶してるから、その時は電話の内容を聞いて、なんか違うような気がすると思った。

この魚は、今朝水揚した巻網運搬船「第75天王丸」が昨日仙台沖で漁獲したカツオ約27トンの中に一本、紛れ込んでいたらしい。

市場では名前がわからない魚はよく調べた上で販売するかどうかを決める。わかったとしても、少しでも怪しい点があれば販売を見合わせる事を徹底している。
オラが市場に到着した頃には、もうすでにこの魚とそっくりのものを図鑑「日本産魚類大図鑑」で見つけていたが、ちょっと怪しい点があったらしく、販売を見合わせていたところだった。

そこに唐桑の定置網「泥這網」のおっちゃんがやって来て、「コイツは南のほうでチダイって呼んでる魚だべ。」と言い出したから余計にコンガラガッタみたい。
図鑑には付箋が貼られていて、そのページにはこの魚にそっくりな写真があった。 なるほど、ボウズコンニャク(チゴメダイ)と書かれている。氷屋のノリはこれを見てオラに電話をくれたわけだ。
オラが写真を撮ってると、そばに「何となくバラムツに似ている。」という人がいる。彼には「全体的な雰囲気は似てるけど、口が小さいし、ムナビレが長いし、ウロコが違うから、バラじゃないと思うよ。」と言った。
バラムツはかつて、アブラソコムツと共に「アブラボウ」と呼ばれ、よく食べられていた魚である。食べると、アブラがあってうまいのだが、ワックス系の脂肪であるためお尻を緩くしてしまうという困った魚だった。お尻をいくらきつく閉めていても毛細管現象と重力には逆らえない。ジワジワと染み出して来るんだわサ。
ヒレを押さえて写真を撮ったら、指に大きなウロコが貼り付いてきた。
オラの親指の爪より大きいんだぜ。
マグロのように早く泳げそうな尾ビレ。
さて、この魚をどうするかということになった。食べようか、水産試験場に持っていこうか、それとも廃棄しようか。食べるとすれば美味しいのか、毒はあるのか・・・・。
書かれていないことが気になって、食べる事を尻込みさせていたようなので、ここはやはり、ボウズコンニャクに詳しいぼうずコンニャクさんに聞く事にした。
「あ〜それはオキメダイかも知れませんね。よければ送ってください。わからないときには瀬能さんに同定してもらいます。」という快い返答を頂いたので、市場の許可を得て、この魚をお送りする事になった。