アングラな魚日記

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zoom RSS 幻の魚屋

<<   作成日時 : 2011/03/03 00:51   >>

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一昨年の11月に開店したオラの鮮魚卸店は、日頃のお得意様の活発な注文に支えられて、なんとか無事に2度目の決算、確定申告を済ますことができた。開店当初はお得意が4軒、その後いくらか増えたのだけれども、それでも配達しない日が週に3日もあったりで、そんな日々が半年ほど続いた。まったく魚が売れない日は家の敷地と日光の大部分を占領していた孟宗竹を一本、また一本と切り倒すことにしていたら、半年も過ぎたころにはあれほど密集していた竹林(ジャングルといったほうがいいかも)の約70パーセントが無くなっていた。

 

竹というものはよく『竹を割ったような・・・』とか『破竹の勢い』とか『松竹梅』などという慣用句がつきもので、竹の性質や、その青々とまっすぐ天に向かって延びる様などまったく目出度くて好ましいのであるが、それは目に映る部分、日光の当たる部分であって、日の当たらない部分までを指していない。日の当たらない地下では、地下茎が行き当たりばったりに這いずり、絡み合い、のたうちまわりながら、無言のまま休むことなくジワジワと四方八方に進軍し、敷地の大部分を精力的に侵略して物干し台を押し上げ、家の基礎を破壊し、桜の木を絞殺し・・・と勝手放題なのだから頭にきちゃうのである。しかも、地下茎を掘り起こそうにも、がっちりと土をつかんで離そうとしない。切るとそこから牛乳を腐らせたようなオエッとする臭いのする汁を泡とともに吐き出して、蠅を呼ぶ。ま、暇だからと試しに一本掘り起こすことにしてみたらば、これが後から後悔するほどの大仕事になってしまった。竹と竹が複雑に、しかも強情に地下茎でつながり合い、そのそれぞれが土をがっちりと掴んで離さないからだった。大量の汗で重くなったタオルと、方々に重なる地下茎の小山と、掘り起こされた後に残る大きな穴を大量生産しながら、オラは根を上げつつも、根を掘り続ける。茎を引っ張り出す。これが、日の当たらない地下で、豊かに繁茂した地下茎があるおかげで竹がまっすぐ伸びるのだなと悟らされた瞬間だった。そして、我が鮮魚卸店にもこのような竹の地下茎並みの強さ、土着性、ネットワークが欲しいなぁと思った瞬間でもあった。

 

半年が過ぎた昨年の四月ごろには資金も底を尽きかけていたのだけれど、お得意様からの紹介で産直施設で販売してくれないかとの依頼があり、と同時期に、マグロ専門の魚屋さんがオラに紙きれを渡し、「後を頼む。」と言い残し魚市場を去って行った。その紙きれには、彼がこれまで大切に守ってきたお客様の名前と電話番号が書かれていたのだった。

 

生き返った。水を得た。助けられた。それとも、何といっていいのだろうか、この人と人のつながりにあの時の地下茎を見たようで、なんだか嬉しかったなぁ。

 

最近、産直施設では、オラの鮮魚店はどうやら『幻の魚屋』と呼ばれているらしかった。日曜日の午前中、わずか3時間の間だけ開店するし、魚が無くなれば2時間でさっさと退散するからである。この産直施設は、道路を挟んでイオン、歩いて3分の距離に生鮮スーパーが2軒、鮮魚店が数軒ある商業地なので当初あまり売れないのではないかと思っていたのだけど、今は一部の商品で奪い合いが起きるほど大変なことになっている。前日は、「ほんとにこんなに売れるんだろうか・・・・」とつぶやきながら仕込みをするのだけれど、実際、産直施設に到着するとすでにお客様が待っていて、トラックから商品を降ろす暇も与えられないままバタバタと開店する。女房がその対応をしているうちにお客様がどんどん集まってきて、売り買いが錯綜したちまちパニック寸前になる。近くの料理屋さんが必ず覗きに来てあれこれ議論しながら何点か購入していき、スーパーの鮮魚担当者がリサーチにくる。気づくと、もう商品のいくつかが無くなっていて、ゴメンナサイ。そして、売れ残った物は徹底的に値引きして、売りきって終了である。明日からは卸売に業態が変わるためここで売り切ってしまわないと無駄にしてしまうのである。魚は絶対に無駄にしてはならないのだ。まるで一撃必殺の居合切りのようだね。ここでは、巷で言う=魚が売れない=は、存在しないのではないか。

 

長テーブル3台のみで、しかも日曜の午前中にたった3時間だけ営業する幻の魚屋は、まったく自制がきかない状態のままクチコミで広がり続けているようだった。今は始めたころの1.5倍〜2倍になっているだろうか。おかげで前日の仕込みが深夜早朝に及ぶようになってなかなか大変だけれど、彼らを裏切るわけにはいかない。そのうち、バチッと弾けて収拾がつかなくなりそうな気がする。

 

オラは欲張りだから、自分が触れるもの、関わったすべてがうまくいってほしいと望む。枯れかかった店だって昇華させたい。そんな売り方だからいつまでたっても大して儲からないのだけれど、そんなこんなで、今は紹介や魚屋の先輩からの引き継ぎでお得意様も増え、注文は途切れず、暇な時は暇なりに忙しく、全店舗から一度に注文をいただくと対応に苦慮する場面も増えている。彼らのネットワーク加わることを許されたオラの鮮魚卸店は、竹の地下茎のように静かに、しかし確実に強く、広がり、結びついていることがわかる。そのおかげで明日も商売ができる。これが何よりうれしいのである。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
お元気で活躍中で何よりです。
お体大切に頑張って!くださいね。
スローな食@seiko
2011/03/10 16:11
seikoさま
ご無沙汰してます。いつもありがとうございます。
mako@管理人
2011/03/10 20:42
地震、津波、火災の被害はありませんか?
大丈夫でしょうか?
どうかご無事でありますよう。
けみ
2011/03/12 09:37
大丈夫ですか?
テレビを見ました。
ご無事であることを祈っています。
いとつりゆーこ
2011/03/12 14:07
皆様がご無事でありますように。
Sho
2011/03/12 14:31
無事か?
おきらく社労士
2011/03/12 20:08
更新がありますように
まるおお
2011/03/12 21:15
検索キーワード「平井憲夫」から来ました。
気仙沼市壊滅してますが、ご無事でしょうか?
通行人
2011/03/13 03:58
私も平井憲夫さんから来ました、ご無事をお祈りしております!
心配です
2011/03/13 11:47
ご無事を願っています
願っています
2011/03/13 14:34

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